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【TITANE チタン】最初から最後まで家族の話だったのかもしれない(一部ネタバレあり)

※記事の中盤以降に映画のネタバレを含みます。未鑑賞の方は気を付けてください。

こんにちは、ヘチです。

今年もやっとGWに入りましたね~。
昨日はGWに突入する気分を味わうために夫婦でレイトショーの映画を観てきました。

パルムドール受賞作 TITANE

この作品は映画好きな友人のインスタを見て知りました。
「お、なんか珍しく絶賛しとるな」と。

早速調べてみると2021年カンヌ映画祭のパルムドール受賞作品とのこと。
2020年は新型コロナウイルスの影響でカンヌ映画祭自体が見送られたので、2019年の「パラサイト 半地下の家族」以来の受賞作品です。

そういう煽り文句に弱いので、観に行く前から期待しかない。
僕はかつてシネフィル気取りの大学生だったので、今でも基本的には難解めな映画が好きです。

キャッチコピー

そんな「TITANE チタン」がどんな映画なのか、公式サイトより映画のキャッチコピーを見てみましょう。

壊して、生まれる。

頭蓋骨に埋め込まれたチタンプレートが引き起こす [ 突然変異 ] 。
常識を逸脱した先にある映画の〈未来〉を受け止められるか。

映画『TITANE チタン』公式サイト (gaga.ne.jp)より引用

フランスの公式サイトも見てみましたが、下記のような文言はなかったです。日本の配給会社の味付けですね。
ちなみにフランス公式サイトで紹介されているSynopsis(あらすじ)はこんな感じ。

Après une série de crimes inexpliqués, un père retrouve son fils disparu depuis 10 ans.
Titane : Métal hautement résistant à la chaleur et à la corrosion, donnant des alliages très durs.

【拙訳】
説明のない一連の犯罪の後、一人の父親が10年来姿を消していた息子を見つける。
チタン:高い耐熱性と耐腐食性を持つ金属。非常に硬い合金を生む。

Titane | Film Diaphana Distributionより引用

あらすじは割愛しますので、公式サイトからどうぞ。

作品について

原題:Titane
監督:ジュリア・デュクルノー
キャスト:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル
公開:2021年(日本では2022年4月)
受賞歴:パルム・ドール(カンヌ映画祭、2021年)

ジュリア・デュクルノーは「RAW 少女のめざめ」の監督でもあります。
アレクシアを演じたアガト・ルセルは今作が映画初出演だったそうです。

個人的感想(ネタバレ含む)

パッと抱いた印象は、どこかで観たことがあるような感じ。
最近の映画全然観れていないので浅はかかもしれませんが、「ネオン・デーモン」とかと似てる気がしました。

こういうタイプの映画はどうしても整合性のある解釈や説明をしたくなってしまうのが元シネフィルの悲しき性なんです。

「チタン(というよりもメタル全般)は男性性の隠喩?」「多用される鏡のモチーフは何?」「作中での炎の役割は?ヴァンサンが炎に包まれたことの意味は?」「アレクシアはマリアでありながらキリストでもある」「髪の毛を二度に分けて刈ることによって段階的に男性性が付与されている」
などなど…

作中でもヴァンサンが神とキリストの比喩を持ち出すシーンがあったように、この手の映画はどうしてもキリスト教的な解釈に引っ張られてしまうんですよね(それ以外の分析を知らないのもある)。ストーリーに集中しようとしても「処女懐胎?」とか「ピエタでは?」とか雑念が紛れ込んできて、考えながら観るような形になってました。
それがハイコンテクストな映画というものの楽しい部分でもあり、疲れる部分でもあり……
それでも、久しぶりにこういうタイプの映画を劇場で観て、仕事と家の往復では得られない刺激を得ました。

 

ちなみに日本版公式サイトには映画のキーワードを拾って解説しているページがあるので、鑑賞後に興味があればどうぞ。
完全解析ページ|映画『TITANE チタン』公式サイト (gaga.ne.jp)

あとは海外サイトになるのですが、個人的にかなり納得感のある解説があったので、英語が読める方はあわせてどうぞ!
作品中に描かれていないシーンに関しても想像で解説されており、そういう見方をすると辻褄が合うかもという部分も多数ありました。
Titane Explained (Movie Plot And Ending) | This is Barry

まとめと余談

アレクシアは事故によって、ヴァンサンは息子の失踪によって「家族」というものの形が変容してしまったようです。
その後、アレクシアは家族殺し、ヴァンサンは離婚をきっかけに一度狂ってしまった家族像をリセットしようとしたのでしょう。

しかし偶然にも逃亡中のアレクシアがアドリアンに擬態してしまったことで、アレクシアとヴァンサンは予期せぬ形で「家族」というトラウマに向き合うことになります。
どちらの家族も母親は何故か影が薄く、作品中では父子に焦点を当てて描かれています。
子の性別こそ本来は違うものの、冒頭シーンの幼いアドリアンの性別不詳感、女物のワンピースを着ていた幼少期のアドリアンの写真、アレクシアが着る男物の作業服、トレーラー上でのダンスのシーンなど、子の性別は意図的に混乱させられてより普遍的な父子の在り方を示すようでもあります。

最後の最後に、トラウマを超克したのかどうかは分かりませんがアレクシアもヴァンサンも何らかの形で新しい「家族」というものに腹落ちして覚悟を決めたような見え方はしました。
そういう意味では「家族」というのは支離滅裂な全体をつなぐテーマだったように思います。

ここからは余談ですが、実は僕は仕事でめちゃくちゃチタンにお世話になっているので、「チタン」というタイトルに凄く惹かれて過剰に期待してしまった感はありました。
骨折した時に顔面や四肢に入れるような金属製のプレート(添木みたいなもの)とボルトはほとんどが純チタンやチタン合金でできています。
生体親和性と高い強度、耐腐食性を持ち合わせた素材としてこれ以上に適した素材があまりないようです。
(ちなみにアメリカは医療費の自己負担率が高いこともあり、安価で剛性の高いステンレス製が結構あるらしい)

夫婦のレイトショーの楽しみ方

GW前の平日最終日なので久しぶりの映画デート。
お互い仕事が終わってから、ネネと飲食店で待ち合わせして軽い食事とビールを一杯ひっかけてから映画館に向かいました。

梅田ブルク7

今回の映画館は梅田ブルク7。
神戸時代に一番映画をよく観ていて基本的にシネリーブルで事足りていたので、実はこの映画館を訪れたのは初めてでした。

場所は少し分かりにくいのですが、E-MAビルの7階にある映画館です。

マイナー作品かつレイトショーのため、予約なしの当日券でも好きな席を選べる状態でした。
後ろから3列目の通路側2席を取ってポップコーンを食べながら鑑賞。

ポピュラー映画とミニシアター系作品をバランス良く扱っている感じがする。
予告編でやっていた阿部サダヲの「死刑に至る病」が面白そうだったので、今度また観に行くかも。
映画『死刑にいたる病』オフィシャルサイト 2022年5月公開 (siy-movie.com)

帰りは一駅手前で降りて

映画の余韻を楽しむため、帰りの電車は最寄りの一駅手前で降りました。

そのまま妻のネネと今日の映画の感想や解釈を話しながら徒歩で20分くらいかけて帰宅。
途中コンビニでほろよいを買って飲みつつ語りながら帰るのが学生時代のようで懐かしい気持ちでした。

学生時代は映画好きな友達と飲みながら公園で話したりしていた。

緑地公園が近い春の夜道は少し土と草のにおいが漂っていて、良い季節。
道すがら何人かの酔っぱらった若者たちともすれ違い、世の中がだいぶ以前のように回り始めていることを感じた春の夜でした。

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ネネとヘチ / 緑地生活夫婦

マッチングアプリのPairs(ペアーズ)で出会い結婚した駆け出しブロガー夫婦。ネネが妻でヘチが夫。2人で緑地生活を楽しんでいます。

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